おしゃれが大好きだった子ども時代
小さい頃から洋服が大好きで、お休みの日には母とふたりでお店を巡り、
「これだ!」と思う一着を探すのが何よりの楽しみでした。
裕福な家庭ではなかったけれど、母はいつも私の喜ぶ顔が見たくて、時間を惜しまず一緒に選んでくれました。
そんなふうにして見つけた服はどれも宝物のように大切で、ただハンガーにかかっているのを
眺めるだけでも幸せでした。
匂いが奪っていった楽しみ
でも、思春期を迎えるころから少しずつ変化がありました。
汗をかくたびに独特の匂いが気になるようになり、
いつの間にか「おしゃれを楽しむ」ことが怖くなっていきました。
お気に入りだった服は黄ばみ、好きだった素材の服ほど着るのが怖くなって、
外出することさえ少しずつ億劫になっていきました。
「どうせ私なんか、おしゃれしても可愛くならない」
「私って、汚い存在」
――そんな言葉を、いつの間にか自分に向けていました。
手術後の期待と、現実とのあいだ
手術を受けたとき、心の中は不安よりも希望でいっぱいでした。
「これで好きな服を思いきり着られる」「やっと自信を持てる」——そんな思いで胸が高鳴っていたのを
覚えています。
クローゼットには、これまでためらっていた脇がみえるデザインの服を並べて、
喜びを噛み締めていました。
けれど、現実は少し違いました。
匂いと汗が完全になくなるわけではなく、
洗濯した服には、うっすらと独特の匂いが残っていました。
期待していた分だけショックも大きく、気づけば衝動的にほとんどの服を手放していました。
それから少しずつ、何をするにも気力が湧かなくなり、
メイクもヘアアレンジも楽しめなくなって——外に出ることも面倒に感じるようになっていきました。
まぶしい日常と、見えなくなった自分
外を歩く人がみんなまぶしく見えて、羨ましくて、「誰かに代わってほしい」と思う日もありました。
自分のことが大好きだったはずなのに、その気持ちはどこかへ消えてしまっていたのです。
みんなそれぞれ悩みや苦労を抱えているのに、
当時の私は、まるで自分だけが一番の悲劇のヒロインのように感じていました。
それでも諦めたくない気持ち
もともと服が大好きで、おしゃれをすることは私にとって、自分らしさを表すひとつの方法でした。
だから、大切な人に会うときは「可愛い」と思ってもらいたいし、
自分でも「今日の私、いい感じかも」と思いたい。
おしゃれは誰かのためでもあり、自分のためでもある——そんな気持ちをもう一度大切にしたくて、
少しずつ「今の自分にできるケア」を探し始めました。
私が見つけた“小さな回復”のサイン
服を守る工夫を知る
お気に入りの服を少しでも長く着るために、インナーを工夫するようにしました。
脇に直接触れないように脇パットを使ったり、通気性のよい素材のインナーを選んだりすることで、
汗の量が少し減ったように感じました。
匂いや黄ばみが気になる服は、専用のケア剤でやさしくお手入れ。
慣れないうちは、手間がかかり大変でしたが、「これでまた安心して着られる」と思えると、
だんだん苦と思わなくなっていきました。
匂いゼロより“コントロール”を目指す
「匂いを完全になくさなきゃ」と必死になっていた自分から、
「自分らしく楽しく過ごせれたら、多少匂いがしてもいい」
と思うようになっていきました。
生理の前後や湿気が多い日など、揺らぐ日もあるのが自然。
完璧を目指すのをやめて、自分の体のリズムや気候などに合わせてケアを続けることで、
心の余裕が少しずつ戻っていきました。
自分に優しいルーティン
朝や外出前にデオドラントクリームを塗ったり、帰宅後にすぐにお風呂に入り、
好きな匂いの入浴剤でリラックスしたり。
ほんの些細なケアでも、体をいたわっている感覚が心を落ち着かせてくれます。
「今日もちゃんと自分を大事にできた」——そう思える時間をつくることが、何よりの回復でした。
おしゃれを“やめない”選択
気分が落ちている日こそ、お気に入りの色や小物を身につけるようにしています。
母や友達、恋人からもらったもの。
鏡に映る自分から「元気をもらえた」と思えたら、それだけで一日が少し違って見える。
おしゃれは“我慢”ではなく、“自分を励ますおまじない”
そう思えるようになってから、毎日が少しずつ明るく感じられるようになりました。
同じ悩みを抱えるあなたへ
匂いの悩みは、誰にも見えないから、余計にひとりで抱え込みやすいですよね。
でも、それはあなたが今までずっと戦ってきた証です。
私も、何度も立ち止まりながら、少しずつ工夫を重ねて前に進んできました。
あなたも、「おしゃれを楽しみたい自分」「好きなことを楽しむ気持ち」を忘れなければ、きっと大丈夫です。
自分を大切にして、一緒に笑顔で歩いていきましょう。
It’s okay — you’re doing your best. Be gentle with yourself.
(大丈夫。あなたはちゃんと頑張ってるよ。自分にやさしくしてあげてね。)
ここまで読んでいただき、ありがとうございました