灼熱の介護現場で生まれた「ドライヤー戦法」

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夏の入浴介助は、もはや立派なサウナ!

社会人になって介護の仕事をしていた頃、夏の入浴介助は本当に本当に過酷でした。
浴室の中は暑さと湿気でモワ〜ッとしていて、もはや立派なサウナ。
扉を開けた瞬間に全身を熱気が包み込み、思わず「ここ、入場料取れるレベルでは?」と
心の中で突っ込みたくなるほど。

髪の毛も制服も数十分もすればびしょ濡れで、
自分でも「……私も今シャワー浴びたんだっけ?」と本気で錯覚するレベル。
足元の水しぶきと自分の汗が混ざって、もはや何の水分なのか分からない。笑

介護の現場が過酷だということは覚悟していたけど、
実際に働いてみると、その“想像”の上をいく忙しさでした。
メイクなんて面接のとき以外、一度もしたことがありません。
というより、そんな余裕は1ミリもない。
どうせすぐ蒸気でリセットされるなら、
最初から“すっぴん清潔スタイル”がいちばん合理的なんです。

利用者さんに少しでも安心して、気持ちよく寛いでもらいたい。

その思いで、湯加減を確かめたり、転倒しないよう細心の注意を払ったり。
全神経を集中させて動いているうちに、外の光がオレンジ色に。

「朝だったのに、もう夕方……!」
まるで時間がワープしたような感覚。
一日があっという間に過ぎていくのが、介護職員の“夏の常識”です。

笑いとチームワークが、最高のエネルギー源

そんな過酷さの中にも、ふと笑いがこぼれる瞬間があります。

利用者さんがお風呂に入っている時、
「今日はお湯加減どうですか?」と声をかけると、
甘えるように「気持ちよすぎて、もう出たくない〜!」と。
その言葉に思わず笑ってしまってました。

職員同士では、忙しい合間に小声でさりげない会話を交わしたり。
「あと何人で終わる?」「…3人!」「よし、ラストスパートだ!」
そんな掛け合いが、どんな高性能ドリンクよりも効くエネルギー源でした。笑

介護の仕事は「体力勝負」とよく言われますが、
同時に“ユーモア勝負”でもあるなと感じます。

「今日もなんとか乗り切ったね〜」と笑い合える仲間。
そして、「いつもありがとう」と温かい言葉をくれる利用者さん。

汗と湿気でどうにもならない環境の中でも、ひたむきに頑張り続けられるパワーがそこにはあったんです!

鏡に映った「びしょぬれの私」に衝撃

そんなある日、夕食準備までのほんの5分ほどの休憩時間。
ふと鏡の前に立って自分の姿を見た瞬間、思わず固まりました。

脇のあたりが、まさかのびしょぬれ。
Tシャツの色が変わっていて、まるで「部分的に水浴びした?」みたい。笑

「うそでしょ…? これじゃ誰かとすれ違っただけで気づかれる…!」
焦りで心臓がドクドク鳴り、頭の中は真っ白に。

このあとフロアで食事介助なのに、

制服を着替える時間も、替えのシャツもない。
汗拭きシートも使い切っていて、できることが何も思い浮かばない。

「あ〜、どうしようっ!!」とパニックになりかけている時、
更衣室の隅に置かれていたドライヤーが目に入りました。

咄嗟に思いついた「ドライヤー戦法」💨

――そうだ、ドライヤーで脇を乾かそう!!

冷静に考えたらだいぶおかしい。でもあの瞬間の私は超本気でした。
「他のスタッフに見られたら終わりだ…」と思いながらも、ドライヤーを握りしめてスイッチオン。

「ぶおぉぉぉぉ〜〜」という音とともに、冷風が脇を通り抜けていきます。
思わず「はぁ〜〜…」とため息。あまりの心地よさに笑いそうになりました。
あの瞬間、熱気と不安が一気に吹き飛びました。

数分後、鏡を見ると、あれほど脇汗で濡れていた服が何事もなかったみたいに変化を遂げました。
「これ、もしかして神アイテムでは!?」とテンションが上がり、
気づけば私は“脇ドライヤー戦法”をこっそり常用するようになっていました。

もちろん、油断は禁物。
誰かが更衣室に入ってくる気配がするたびに、慌ててスイッチを切って無表情を装う。
また一人になると「ぶおぉぉ〜」と再開。
完全にスパイ映画の主人公になった気分でした。笑

「自分を快適にする工夫」が心を軽くした

けれど、この小さな“荒業”には思わぬ効果がありました。
それは、心が少しだけ軽くなったということ。

介護の現場では、どうしても自分より相手を優先しがちです。
汗だくでも「大丈夫ですか?」と声をかけ、
体調が悪くても無理をして現場に立つ。
そんな毎日が続く中で、自分を気遣う余裕はどんどん薄れていきます。

でも、あの日“脇を乾かした”たった数分間で、
「自分のことをケアする時間も大切なんだ」と気づけたんです。
冷たい風を当てているだけなのに、

自分の存在を取り戻したような、そんな不思議な感覚でした。

「自分を守ることも仕事のうち」と気づけた

今振り返ると、あの“ドライヤー事件”は私にとって大きな転機でした。
それまでの私は「自分を後回しにしてでも頑張らなきゃ」と思っていた人間だったのですが、
その考え方を少し変えられたのがこの出来事。

自分が快適でいられること、笑顔でいられること。
それはわがままではなく、介護の現場を支えるために欠かせない大切なことなんです。


そして、今日もどこかで汗を流しながら頑張っている介護職のみなさんへ。
――どうか、自分の体と心を大事にしてくださいね。

あなたの笑顔が、もう誰かの救いになっているのですから。

Even a small smile can be someone’s big comfort. So please, don’t forget to smile for yourself, too.
(あなたの小さな笑顔が、誰かにとって大きな癒しになる。だから、自分のためにも笑ってね。)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました

わきキュートのにおいケアラボの運営者

自分のワキガ体質に悩みつつも、「どうせなら楽しく生きたい!」と思って工夫を取り入れています。
リアルな体験をもとに、においケアや日常で役立つことをお話ししています🎀

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